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CHAPTER 2 「CHASE DOWN」

THEME SONG 
- 2015 12/09 08:30 CHINA SHANGHAI -


政治犯収容所からの脱出に成功し、彼らは崑崙山から遠く離れた上海に到達した。
そこで出来るだけ安い宿を見つけ、一晩だけ潜伏した。
街のいたるところでは検問が設けられており、空港にも超厳重なセキュリティが設けられているのでアメリカにはそう簡単には帰れそうになく、まさにお先真っ暗な状態だ。

そして、男は目を覚ました。

ウラジミール「…起きろ」
男「…ん?…朝か…」

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無表情なロシア人に起こされ、男は意識を覚醒させるために冷たい水で顔を洗った。

トレバー「ヘイヘイヘイ!!俺の朝飯はどこだ?昨日から俺様は何も食っちゃいねえんだ」
ウラジミール「冷蔵庫の中の物を適当に食え、あまり時間がないんだ」 

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ウラジミール「…俺はお前が誰かは知らないが、知る必要はない。トレバーの奴に金をもらった以上は帰国まで協力する」
男「ああ、感謝するよ」
ウラジミール「外じゃサツ共が俺達の事を嗅ぎまわってやがる、空港で正規の便を使って帰国するのは不可能だ」
男「…じゃあ、どうするんだ?」

トレバー「おいおい決まってるだろ!?奪うんだよ、飛行機を」
男「何だと!?」
ウラジミール「情報によれば、今夜11時に小型の個人ジェット機が飛び立つ、こいつを奪うんだ」
男「誰が操縦するんだ?」
トレバー「俺は元空軍パイロットだ、飛ぶことに関してはプロだぜ!」

――こいつが元軍人だと?…信じられねえな…

男「…分かった、ここから空港までどのくらいだ?」
ウラジミール「数時間程度だ」
トレバー「よし…上海観光と行こうぜ」











3人は隠れ家の外にでると、建物のすぐ隣りの駐車スペースに向かった
そこにはヒュンダイ製の大衆向けセダンがあった
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トレバー「上海市民からお借りしたもんだ、ガソリンは満タンだ」
ウラジミール「乗れ、俺が運転する」

そう言うとウラジミールはドアに手をかけ、車に乗り込んだ
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駐車スペースから車を出したところで男が声をかけた
男「運転を代わるよ、あんた疲れてるだろう?」

予想外の申し出にウラジミールは若干驚きつつも、「助かる」と言って席を代わった
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男の運転するセダンは規定速度を守りながら緩いペースで走った

トレバー「しっかし空気が汚えな、こいつらは何食ったらこんなに息が臭くなるんだ?」
男「…まさかお前は空気汚染の原因が人の口臭だとでも思ってるのか?」
トレバー「他に何があるってんだ」
ウラジミール「……昔からお前は、頭の悪い奴だな」
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バカバカしい会話を繰り広げつつも、3人は警戒を一切怠らなかった
この3人が政府関係者を数十人も殺し、収容所を派手に荒らしたのはつい先日のことだ
当然ながら街の至る所に検問や武装警官が配置されており、彼らにとってはとても安全とはいえない状況なのだ
ウラジミール「…この先に政府の検問だ、右折しろ」
男「分かった」

トレバー「奴ら、俺の顔を見てやがる…」
ウラジミール「自然に振る舞え」
トレバー「俺が中国人に見えるかよ」


ウラジミールの指示に従い、男がステアリングを切って右折した

その瞬間―



「画像」

男「ッッッ!!!」
トレバー「クソ!!」

ウラジミール「中国政府のヘリだ!!避けろ!」

ズドドドドドドド!!!
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ウラジミール「ぐあああ!!」

右折した直後に轟音とともに視界に入ったのは、人民解放軍の攻撃ヘリだった
ヘリはセダンと向かい合い、ホバリングしながら 撃ちこんできた

トレバー「畜生!!何が起きてやがる!」

ウラジミール「俺達を仕留めに来やがったんだ…」

様々な音が耳を行き交い、視界が真っ白になる
薄れかけの意識を無理やり叩き起こし、男は再びステアリングを握った

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パイロット「ターゲットを補足した、再度攻撃しろ」
ガンナー「…了解」

男「どうにかして落とせないのか!!」
トレバー「スティンガーなんて持ってねえぞ!このままじゃ3人揃って死んじまう!」

ウラジミール「……死ぬのは一度だけだ」
男「何言ってやがる!誰も死にはしねえよ!!」

攻撃ヘリはすでに2回目の攻撃の準備を整えており、猶予は殆ど無い
男はアクセルを思い切り踏み込み、ジクザグ走行でヘリの射程範囲から脱出しようと試みた
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トレバー「また来るぞ!!」

男「クソ!…何としても避けてやる!」

しかし、高性能な攻撃ヘリからの攻撃を簡単に回避できるはずもなく、3人の乗るセダンは着弾地点からの爆風によって確実にダメージを負っていった
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トレバー「クソ!!クソ!!クソ!!」
ウラジミール「目をやられた!何も見えねえ!」

30m砲の連続する爆発と轟音でもはや何も思考できる状態では無く、トレバーは無意識的にダッシュボードを開き、中から小型の単発式グレネードランチャーを取り出した

トレバー「クソ野郎共を燃やしてやれ!!」

男はトレバーから無言でグレネードランチャーを受け取ると、窓から身を乗り出し、ヘリのコックピットに標準を合わせて素早くトリガーを引いた
aaaaa (2)
男「ぐおおおおおお!!!!」

言うまでもなく、このような小型のグレネードランチャーはヘリを相手に使うようなものではない、もちろん命中する可能性など無いに等しかった

しかし―



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バスン!!


パイロット「!!!」
ガンナー「被弾した!!機体の制御が出来ない!」
パイロット「クソ!何が起きた!」
aaaaa (1)
ガンナー「もうダメだ…墜落する!墜落する!墜落――

ズバァァン!!
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制御の効かなくなったヘリは無様にも道路に打ち付けられ、大爆発を巻き起こした
3人の乗ったセダンは爆風に飲まれ、いとも簡単に大破した


そして彼らの意識は一瞬にして消え失せた














- AFTER 06:00 HOUR -


――…?

――……俺は…生きている?

――こいつらは誰だ?…
警官「破片を回収しろ!急げ!」
警官「この2名は比較的軽傷だ、すぐに収容所に運べ!」

どうやら自分は生き残ったらしい、男はその事実を確信すると同時に、この後どうなるのだろうか、という不安感を覚えた

T「…うおおおおおおおお!!!」

彼の視界の隅に、Tシャツ姿の男が映った
トレバーも同様に生きていたのだ

警官「!? と、取り押さえろ!」

T「死ねェェェ!!」

トレバーは警官の首筋にナイフを刺し、大きく抉った

警官「ぐああああ!!!」
T「テメェもだ!ミンチにしてやるよ!」

Tは立て続けにナイフを振り回し、警官たちに致命傷を与えていった
全員をたった一人で片付けると、Tは男に近寄った

男「ウラジミールはどこに居るんだ?…」
T「分からねえ…だがあいつのことだ、そう簡単には死なねーさ」

その直後、けたたましいサイレン音が複数の方角から聞こえた
もうすぐ公安警察が大勢やってくる

男「…お、おい…T…逃げないとまずいぞ…」
T「こいつらのパトカーを盗むしかねえ!立て!時間が無いぞ!」
男「ウラジミールを置いていくのか…?」
T「…ヤツのことはもう忘れろ!」

T「人の心配をしてる余裕なんざあるわけねえだろ!」

男「ウラジミール…すまねえな…」

徐々に近づいてくるサイレンの音に焦らされ、2人は公安警察のパトカーに乗り込み、空港を目指してその場を後にした

T「…こいつに乗るのは久しぶりだ」
男「運転席に座るのは初めてだろう?」
T「その通りだ」

T「お前、ひでえ顔してるぞ。少しの間寝たらどうだ?着いたら殴ってやるよ」
男「ああ…そうさせてもらう」

ロクに食事も摂っていない上に、先ほどの爆発のせいで全身に深くダメージを負っている彼らは、極限状態に陥っていた
彼らを突き動かしているのは母国に帰りたいという、強い意志のみだ










- AFTER 20:00 MINUTES -

T「…起きろ、もうすぐ空港だ」

3度めの目覚めを迎えた男は、重い瞼を開けると目の前のバリケードを凝視した

T「あれを突破しねえと空港には入れないぜ」

男「嘘だろ…どうやって突破するんだ」
T「方法は一つだけだ、そうだろ?」

その一言だけで男はすべてを察した、彼は強行突破に挑むつもりなのだ

T「しっかり掴まってろよ!」
男「俺はまだ寝起きなんだぞ…畜生!」

トレバーはアクセルを壊れんばかりの強さで踏み潰し、バリケードに向かって容赦なく突進した

T「らああああああああ!!!!!」

ガシャーン!!

男「ック!!」
T「ざまあ見やがれ!クソ中国人共が!!」

男「西側の格納庫に向かえ!予定とは違うが、小型の民間機があるはずだ!」
T「OK!任せろ!」

しかし、予想外なことにバックミラー越しに追ってくる数台のパトカーが彼らの視界に入った

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警官「ターゲットを確認した、現在追跡中」

男「クソ…奴ら追ってきやがるぞ!」
T「グレネードランチャーを使え!」

男「よし…1発も外さなければ弾数は足りる」
T「面白くなってきたじゃねえか…!」

男はヘリを落とした時と同様に大きくクルマから身を乗り出し、レティクルを追ってくるパトカーのフロント部分に合わせ、トリガーを立て続けに引いた
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警官たちは予想外の反撃に驚き、爆発に巻き込まれて次々とクラッシュしていった

T「いい腕だ!あと少し持ちこたえてくれ!」
男「ああ、任せろ!」

男「…こいつで最後だ、当たってくれよ…」

しかし、運悪くパトカーは彼が予想したルートを通らずに、ギリギリでグレネードを回避した
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男「クソ!!外した!」
T「ノープロブレム!!」

Tは自信ありげにそう言うと、急激なブレーキングを行い、後続のパトカーのバンパーに思い切りぶつけた
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男「ぐおッ!」

T「あの世までドライブしようじゃねえか!!」
男「冗談じゃねえぞ!!…うおッ!」
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トレバーは巧みとは言い難い攻撃的なドライビングテクニックで後続車に派手に体当りし続け、ついに最後の1台もクラッシュした

T「今ので最後か…あそこが格納庫だな?」
男「ああ、操縦は頼んだぞ」
T「元空軍パイロット様に任せておけ」

格納庫の中には小型のジェット機が停められていた
トレバーはコックピットに入ると、計器類をチェックし、エンジンを始動させた
轟音を響かせながら、トレバーはジェット機を滑走路の端に移動させるタキシングと呼ばれる動作を行った

男は後部座席に乗り込むと、苦しそうに言った

男「耳がイカれそうだ…」
T「すぐに慣れるぜ」

滑走路の端に到達すると、ジェット機は急激に加速した
T「行くぜ…ファッキン・テイクオフ!!」

男「気分が悪いぞ…」
T「吐くときは地上の中国人共に向かって吐けよ!いいな?」
男「俺のゲロは爆弾じゃねえんだよ…」

30時間以上に及ぶ脱出劇の末、ウラジミールを除くこの2名は無事に上海から脱出することが出来た
背後には壮大な上海の夜景がとてつもない存在感を放っている

T「ハワイにでも寄って給油しねえと燃料が持たねえぜ」

ヘッドセット越しにトレバーの声が聞こえてくる

男「問題ない、バカンスする暇はないだろうけどな」
T「記憶はまだ戻らないのか?」
男「…残念ながらそうらしい」
T「名前もまだ思い出せないのか?」
男「ああ、思い出せないよ」

T「じゃあ、ディアオなんてどうだ?」
男「それは中国語か?なんて意味だ」
T「紳士にはとても口に出来ないような意味だ、辞書でも引いて調べろよ」
男「…他に無いのか?」

T「思い出すまで待ったほうが良さそうだな、残念ながら俺にはネーミングセンスが無い」

背後の夜景もすでに消え、ウィンドウの外はすべてが暗闇に包まれている
今このジェット機がどこに居るのかすら、一切分からない
様々な不安要素を抱える中、彼の記憶は未だに戻っていない
トレバーは彼の心中を察したように、「まあ、気楽に行こうぜ」と励ますように言った

男はコックピットの中で何となく背後を振り返ると、暗闇の向こうに更に黒い何かが見えたような気がしたが、それは気のせいだろうと心中で自分に言い聞かせた















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